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名古屋高等裁判所金沢支部 昭和58年(ラ)7号 決定

抗告人 福井慎治

主文

本件抗告を却下する。

理由

一、本件抗告の趣旨及び理由は別紙執行抗告状(写)記載のとおりである。

二、そこで先ず抗告人が本件抗告権者にあたるか否かについて検討する。

本件記録によれば、本件土地建物には抗告人を権利者とする抗告人主張の始期付賃借権設定仮登記がなされているが、本件物件明細書には売却により効力を失わない賃借権として前記賃借権が記載されておらず、備考欄に本件賃借権は民法三九五条によって保護すべき短期賃貸借に該当しないと認め最低売却価額を定めた旨記載されていることが認められる。

しかしながら、仮に抗告人主張の賃借権が売却により効力を失わないものであり、本件物件明細書の前記記載が誤りであるとしても、右記載により抗告人主張の賃借権が消滅し、或いは短期賃貸借としての効力を失うものではないから、抗告人は本件売却決定によりその権利を害されるものではなく、抗告をなすべき法律上の利益を有しないというべきである。

三、よって抗告人は本件抗告権者にあたらないから、抗告理由の当否について判断するまでもなく、本件抗告を不適法として却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 山内茂克 裁判官 三浦伊佐雄 松村恒)

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